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「振込手数料」から感じる「情」

経営していく中で色々な情報に接しますが、その中でも経理から見えてくる「情」報は、特に経営に欠かせない正に生きた情報を提供してくれます。

例えば「振込手数料」からどんな情報が得られるでしょう。ほとんどの方にとってそれはたいしたことではない、どうでもいい、気にもとめない情報でしかないのではないでしょうか。

でも、請求書を発送し、代金が振り込まれるまでの過程を見ることで、色んな事がわかってきます。

多分振込料は420円のはずなのに毎回840円も引いて振り込んでくる会社。

振り込まれるまでの期間が毎回違う。

2、3千円の請求でも振込料を引いてくる。

千円未満を切り捨て、そこからまた振込料を引いてくる会社。

それとは逆に振込手数料を引かずに毎月決まった時にきちんと振り込んでくれる会社。

10日に納品すると11日には振り込んでくれる会社もあります。請求書の発送前に回収が済んでしまいます。

そんな会社の情報に接すると何かお返しををしなければいけない、そう考えるのが日本的です。おまけをつけよう、決算の時には日頃の感謝を込めて利益還元値引きをしよう、となります。それが好循環につながります。

面白いのは、振込料を引かずに支払をしている会社は、回収も同じように請求額で振り込んでくれるお客さんが多いようなのです。

毎回840円引いて振り込んでくるお客さんに利益還元しても何も響きません。

以前、「振込料を多く引きすぎていました。その分、1,260円をお返しします。」というお手紙を見たことがあります。

多分公取委か何かの調査で指摘されたんだと思うのですが、それが誰もが知っている大企業だったりします。大企業にとって振込料もまとまればバカにならない話で、もしかしたらそうすること科学なのかもしれませんが、印象はとっても悪くなります。1,260円返すのに、いくらかかっているのでしょう?

残念ですが、この情報は社長まで上がっていきません。税理士さんもそんなことを思って帳簿を見てはいないでしょう。でも経営していて、こんなに面白い情報はありません。

ところで、経営コンサルタントさんや銀行さんの情報はどうでしょう。会社の決算書を提示すると問題点を洗い出してくれます。しかし、元となった決算書の数字が正しいかどうか検証はありません。

大きく貸倒損失を計上した時、銀行のそれもとても偉い方から「貸倒損失は利益が出た時にやるんじゃないの」と言われたことがあります。それは粉飾です。でもそれが貸すための条件、科学なのだ、とでも言いたいのでしょうか。

じゃあ貸倒損失を計上しない決算書を提出したらどうでしょう。「売掛金の回転率が悪いですね」と言われるだけです。これでは何のことかさっぱりわかりません。「売掛金が多く残っていますが、回収が遅れていて危ない先があるのではないですか」とは教えてくれません。

経営コンサルタントも決算書を見て「在庫が多いですね、もっと減らしましょう」とは言ってもそれが粉飾かどうかの検証はしていません。棚卸に立ち合うなんてことはしないでしょう。中途半端な情報では経営が危うくなるだけです。

これらを見抜く為に、そうならない為にも本物の情の経理を作り上げなければいけません。

 

10年、20年で大きく成長した会社もありますが、あっという間につぶれてしまった会社もあります。その差は何だったのか。大きくなった会社がオンリーワンの何かを持っていたのか、明確な経営戦略があったのか、それがあったのも事実ですが、もう一つ大切なもの「情」の経営を実践してきたからだと思います。

どんなに立派な理念や企業戦略であってもそれが社員さんや顧客に伝わらなければ、みんなががんばろうという気にならなければうまくいきません。すごい技術だな、と感心させられても簡単につぶれてしまった会社、内部分裂してしまった会社、そんな例をいっぱい見てきました。それとは逆にこれは、という技術がある訳でもないのにライバルがひしめく中、仕事が途切れることなく、みんなから慕われ、頼られている会社もあります。

長く、みんなから慕われる経営をするための一助となる「情の経理」とはどういうものなのか、「情」の字が好きになる経理が私のテーマでもあります。

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